文化審議会著作権分科会の答申(3月5日)に対する当会の見解

音楽教育を守る会は、昨年12月21日に著作権等管理事業法に基づく文化庁長官裁定を申請しましたが、本件は文化庁文化審議会著作権分科会にて検討がなされ、3月5日付けで答申が出されました。この答申に対する当会の見解は以下の通りです。

当会の見解

今回示された文化審議会の答申は、使用料徴収の是非について踏み込んだ判断をしていただけなかった点で、当会としては大変残念に思っております。答申は、現在進行中の裁判の結果如何にかかわらず、両当事者に配慮した内容であり、JASRACの提出した使用料規程を裁定日付で有効とする一方で、著作権が及ぶことを争っている者に対しては、司法判断確定まで利用許諾契約手続の督促等を行わないことを期待するとしています。

しかし、徴収に応じる事業者に対して、利用者代表との具体的な徴収内容について協議を行っていない不完全な規定で徴収を始めることは不正義であり、裁判の結果、JASRAC に請求権が確定した場合において、あらためて著作権等管理事業法に則って利用者代表と協議して使用料規程を成立させ、後に裁定日に遡って徴収すべきであると考えます。
また、請求権が存在しないとの判決が確定した場合には、一旦徴収された使用料について、JASRAC に対して不当利得返還請求することを想定していますが、これは使用料を支払った事業者にとっても、また、既に分配された音楽出版社や作家にとっても実務上実現することはきわめて困難と言わざるを得ません。

<補足>
万が一レッスンに演奏権が及ぶと判断されJASRACに請求権が認められた場合においても、ダンス教室やカラオケ教室とは異なり、CDや音源による演奏が必須ではない音楽教室において、料率協議を行うには、レッスンにおけるどの部分が演奏権に当たるのかを定義しなければなりません。その上で、それがレッスンに占める割合を想定して使用料を算定するべきです。また、PD(パブリックドメイン)曲を主体にしたレッスンも多く、また、JASRACに信託していない楽曲で構成された教材もあるなど、レッスンに於けるJASRAC管理曲の比重は個々のレッスンにおいて大きく異なっているのが現実です。

整理すると
  1. レッスンにおける演奏権がどの部分にあたるのか
  2. その上でレッスンにおいてその演奏の占める割合がどれほどなのか
  3. レッスンではPDやJASRAC非管理の楽曲も多くその割合がどれほどなのか
これらを事業者ごとに明らかにしなければ、一律的な使用料徴収規程を制定することはできません。

これらの事項を係争中に協議した場合、不調となることは明らかであり、再度、著作権等管理事業法に基づく「文化庁長官裁定」となる可能性が高い一方、裁判の判決が確定した後であれば、少なくとも1. については明確となり、具体的に協議できるものと考えています。

以上を考慮すれば、仮に文化庁長官の裁定において答申通りに当該規程の実施を認めるとしても、徴収開始にあたっては、請求権の存否についての判決が確定した場合において、利用者代表と料率等について著作権等管理事業法のルール通りに協議して使用料規程を成立させることが必要であり、しかる後に、裁定日に遡って徴収を開始するべきであると考えます。

文化庁長官に対しては、不完全な使用料規程によって徴収するというような不正義を許さないよう、行政指導することを求めます。

 リリース本文はこちら

音楽教育を守る会 Facebook

音楽教育を守る会 Twitter